『 ベスト・フレンド ― (2) ―  』

 

 

 

 

 

 

 

 

   ゴトン  ゴトン ・・・  がたん。

 

かなりの騒音と共に玄関のドアが開いた。

「 お〜い ガレージの掃除、 いってくるから〜〜〜 

 え?  うん スマホ もってく。  家電に連絡? あ それ、ないから 

ジョーは バケツだのモップだの両手に抱えている。

「 あ〜 昼前に終える予定さ。    え? ひるめしのリクエスト?

 あ〜〜 ・・・ きみのおむれつ! いいかな  うん 頼む。 」

じゃあね、と彼は荷物を抱えやっこら歩きだした。

 

   がっちゃ がっちゃ がっちゃ。

 

「 や〜れやれ・・・ ガレージ掃除 しばらくサボったからなあ〜

 ゴミが詰まってたら大変だし。

 あ〜 日曜はチビ達も そうじ〜〜ってくるからな〜〜

 いろいろ・・・ 仕舞っておかなくちゃ 

彼は門の脇にあるガレージ・ドア を開けた。

この家のガレージは一見 < 普通 > だけれど

奥は 地下の格納庫につながっている。

緊急の場合は ここから避難、そして ドルフィン号へ  ・・・となる手筈。

 幸い ここ数年、そんな事態には至っていない。

まあ しかし 備えはいつも必要、ってことだ。

 

「 おわ・・・ 枯葉やゴミの掃きだめじゃんか〜〜〜 すっげ〜

 あは ふわふわ〜〜 だなあ ・・・・  」

 

   クビクロ  ・・・ 思わず その名が口から洩れた。

 

「 ・・・ よく枯葉で遊んだよなあ ・・・ アイツと さ。

 チビの頃なんてさ あいつ 葉っぱと一緒になって跳んだり

 撥ねたりしてたもんなあ ・・・ 

ガサ ガサ ガサ −−−−

 箒であつめれば けっこうなカサになった。

「 お〜〜 これでイモでも焼くかあ〜〜

 あ ・・・ そっか。 こんな僻地だって今は焚火 厳禁 だもんな 

 ―  なあ クビクロ  ・・・ 楽しかったよなあ

 ぼくのクビクロ ・・・ ぼく達、会えて  よかったんだよ ね? 

彼もまた 水平線の彼方へと視線を飛ばす。

 

    空 は いいなあ ・・・・ いつだって自由だ

    海 も いいなあ きままで自分勝手だ ・・・

 

    風になって 空 と 海 に 溶けこめたら なあ 

 

「 ふふ ・・・ こんなこと、言ってたらバチが当たるよね?

 今 こんなに平和で 平穏な日々を送れているんだもの ・・・

 不満なんてないよ うん。  愛する家族もいるし。

 毎日?  うん ごく普通だな〜  ぼくは満足しているけど。

 いつも一緒に暮らす仲間は 少ないけど ―  いいんじゃないかなあ  」

 うん うん・・・ 彼は一人で頷いている。

 

        けど  ・・・   

 

彼のこころは  すい〜〜っと 彼方に飛んでいってしまう。

「 あ ごめん なに?  」

茶色の瞳が やっと戻ってきた。

「 え 友達 ・・・ それも 親友?  ― 親友 は いない な。

 うん ずっと。  サイボーグだから、じゃないよ。

 ぼく、ムカシから  ひとり だったもん、ひとり に慣れてるさ。 」

「 淋しくないか って?  べつに。

 そりゃ ―  トモダチ ・・・ いればなあ〜って思うけど

 

       と も だ ち  かあ ・・・

  

  ・・・ クビクロ・・・。   あいつだけ さ。 

薄く微笑んでいるけれど その奥に 彼はどれほどの感情を押し込めているのだろう

それを知っているのは  < くびくろ > だけなのかもしれない。

「 今?  ああ 家族と暮らしているから淋しくないよ。

 え? トモダチ? クビクロ以外の?

 ・・・う〜〜ん  ジェットやピュンマは 仲間 だし

 親友 は いなかったし これからも いない さ 多分ね。 」

 

 がさごそ。 がさごそ。 

 

掃き集めた落ち葉を 袋に詰めた。

「 今?  うん 今はそうだな〜 親友っていえば フランソワーズ かなあ

 え?  オクサンを親友って ヘンだって?

 そうかなあ〜〜〜 う〜ん 親友っていうか 戦友 だけどね  人生の ね。 

 

  えへへ ・・・・ やっと彼は心から嬉しそう〜な笑顔をみせた。

 

「 だってなあ〜  テキはがっちりタッグを組んだ以心伝心コンビなんだぜ?

 こっちだってさ〜 夫婦で防戦しないと〜〜 

 ・・・ え?  テキってなにかって?  あ〜〜 ウチのチビ達! 

 あはは ・・・ ウチは双子でさ〜 もう毎日が戦争なんです! 」

 

   ザン。  落ち葉入りの袋をいくつも持ち上げる。

 

「 さあて と。 これで遊んでやれば ― あいつら しばらくは

 大人しくしているかもな〜〜〜

 うん めっちゃ可愛いよ?  でもね!  天使が天使でいるのはほんのわずかの

 間でね!  ほとんどの時間は < 小悪魔 > なんだぜ!  」

 

 ― ふふふ ・・・ ぶつぶつ言いつつも案外嬉しそうに

ジョーは 庭の方に戻っていった。

 

   ねえ ジョー君。 ・・・ ホントに トモダチ、いないのかい??

   それにしちゃ 随分日々充実してて楽しそうにみえる けどねえ・・

 

 

 

 

      § 親友

 

 

 

 ―  珍しいヒトに聞いてみました。

  え〜と・・・?  ここにくれば会えるって聞いたんだけど ・・・

お。   ああいっぱいいますね〜〜〜     お〜〜〜い?

 

   わんわんわ〜〜ん   きゅう〜〜〜  きゃん♪

 

大きいのや ちっこいの、短毛さんやら優雅なふさふささんやら 

いろいろな < 仲間 > が 戯れているなあ。

 

   お〜〜い すいませ〜〜〜ん ・・・ !

 

「 ? 」

 

声をあげると 茶色毛クンがぱっとこちらを見てくれた。

 

   あのう〜 島村ジョーさん についてお話し、うかがえます?

 

「 ・・・ う  わん? 」

 

はい〜〜 こちらの < お世話人さん > にお願いしたんです。

島村ジョーさんの オトモダチ、教えてくださいって。

そしてたら アナタのことを紹介されました。

 

「 ? わん? 」

 

茶色の瞳が じ〜〜〜っとこちらを見つめている。

ですからね、 島村ジョー、いえ ジョーさん はどんな方ですか? 

ああ アナタにとって、 ですけど・・ あ〜 カンタンでいいですよ?

「 ・・・ ん〜〜〜   くぅ〜〜〜ん ・・・・? 

  ! わ わんわん  きゅう〜〜んくうくう〜〜〜 

すいません〜〜〜 あのもうすこし  ゆっくり・・・

「 ? わん? 〜〜〜 わ〜んわん。 くう く〜〜〜うう  わん。 」

 

あのう〜〜〜 できましたら そのう〜〜 アナタ方のコトバじゃなくて・・・

そのう〜〜〜

「 わわん? 」

茶色毛クン は 目をまん丸にして ― 座りなおした。

「 ?   あ〜  ニンゲン語じゃないとダメかあ〜 」

はい すいません できれば・・・

「 わん!   あ いや すまんね〜〜 ついつい懐かしくてね〜

 地上にいた頃を思い出しちまって・・・ 犬語、しゃべっちまった。 」

 ・・・ はあ 〜〜

あのう ・・・もしかして ・・・ 時々はこちら ( 地上 )に

戻っていらっしゃるんですか?

「 そうだよ〜 僕 もうとっくに 空の上、だもん。

え?  虹の橋を渡る、だって?  !  あれは! 猫どもが行くとこだよっ 

ああ 大変失礼いたしました〜〜 お詫びいたします。

それで あのう〜〜〜 島村ジョーさんって?

「  ・・・ ああ ・・・ ジョー ねえ ・・・・

 ウン  あのコも可哀想なコだよねえ 〜〜〜  ホント・・・

 出会った初めての時、すぐにわかったもんね。

 ああ 俺、チビっこだったけど 彼の眼差し ― 強烈だよう〜〜 

 オレが! 側にいてやらなくちゃ! って 思ったもんなあ 

 

出会いの時から ですか!

 

「 ウン。 俺さ するどいんだ〜〜〜  」

 

なるほど・・・ ジョーさんはいろいろ複雑な境遇の方ですから・・・

 

「 境遇? あ〜 あのさ アイツは ニンゲン じゃないよね?

だって全然ニオイがちがうもん。 なんつ〜の? 固いモノの匂いするんだ〜

 え? 手や足はニンゲンっぽい匂いもするけど・・・

 でも アイツはニンゲンとは違う生き物だろ?  

 

わかるんですか 

 

「 あったりまえだろ〜〜 俺ら犬族を馬鹿にするなよ〜〜

 あ アンタはごくふつ〜〜のニンゲンだねえ  ははは 」

 

ぺろり。  茶色わんさんはワタシの指先を舐めてくれましたよ〜〜

あ それで その・・・ ジョーさんのこと ・・・ 怖いですか?

 

「 なんで??  ニンゲンと違う生き物でも ジョーはジョーじゃん?

 俺 アイツ ほっとけない! って直感したんだ。

 俺がついててやんなきゃ! ってね〜〜 」

 

そうなんですか・・・ 仔犬さんのころにねえ

 

「 うんめいの相手 ってことさ。 俺たちは皆 うんめいの相手 ってのがさ

生まれる前から決まってるんだ。  俺の相手は アイツ、ジョー。 

 あ〜  すっげかわいいメスが一緒にいるよね〜〜 金色の巻き毛で優しいメスだよ

 ・・・ でも あのコもちょっちニンゲンと違う匂い するなあ〜

あ。 メス じゃなくて   おんなのこ  っていうんだろ、ニンゲンは。

 まあね〜 どうでもいいけど。  ジョーにはお似合いだと思うよ。 」

 

ほう  なんでもわかってるんですねえ。

 あの もしかして自分の能力も?

 

「 あ? もちろんさ〜〜 チビの頃に 親父とお袋からよ〜〜く

叩きこまれた その力は お前の運命のあいてのためにつかえ ってね 

 

そうなんですか。  やはりアナタは特別なわんさんなんですね!

 

「 トクベツ? な〜に言っての!

 俺たち犬族はね 皆 < トクベツな能力 > もってんだよ?  」

 

え?? そ そんなこと 初めて聞きましたよ?

 

「 ははは 当たり前だよ〜〜 み〜んなね、犬族以外には知られるな、

 使うのは < うんめいの相手 > のためだけに使え! って

 ほんのチビの頃から叩きこまれてるからね 」

 

あ・・・ あのう〜〜 親御さんに?

 

「 それもあるけど。  あ〜 俺たち、生まれる前にもこっちにいてさ〜

 あの < お世話人さん > と過ごすんだぜ

 そんでもって・・・いろいろ・・・教わるんだ 」

 

え  教わる?  お手! とか おあずけ! とか ・・・ですか?

 

「 〜〜 アンタ 馬鹿じゃね〜の?? そんなの、俺たち生まれる前から

 知ってるぜ?  わかんないフリしてやってるだけ!  」

 

は はあ  スイマセン・・・   それで その能力については ・・・

 

「 ・・・ ま〜ね これは絶対に秘密なんだけど・・・・

 アンタ ここまで来ていいって < お世話人さん > から

 みとめられたんだろ?  じゃあ  ちょこっと話すけど 」

 

はい お願いします! ぜひ〜〜〜 賢いわんさん!

 

「 ふ ふん。  だから〜〜 俺ら 犬族はさ 皆とても賢いし

 お前らニンゲンが 考えてもいない 能力 をもってんだ。

 それを使っていいのは < うんめいの相手 > のためだけ。

 それも ピンチの時だけさ。 

 

はあ・・・  どのワンさん達も ですか 

 

「 ああ。  ま  ほんんどの仲間はそのトクベツな能力を

 使うことはないよ。  使わないですめば その方がいいのさ 」

 

ふうん ・・・ そうなんですか〜〜〜

・・・! あれ  ― え それじゃ アナタさんは 

 

「 そうさ。 俺は  ジョーの手で始末されるために 生まれてきたんだもの。 」

 

そ そんな ・・・・

 

「 そんなも こんなも  ― そう決まってたの。

 俺はさ〜〜 ものすご〜〜くうれしいかったぜ〜〜〜 

 だってそんなこと、出来るヤツってほとんどいないんだもんな〜 」

 

 ・・・ そ そうなんですか・・・

 

「 ああ。 アイツ さ。 ほっんとやりきれない・・・ってか・・・

 淋しい〜〜〜 凍えそうな 目 してて。 カワイソウ〜〜って思ったぜ。 

 うん 初めて見たとき すぐにわかった 

 

でも あのう < ニンゲン > じゃないってわかったんでしょう?

 

「 それは身体のことだろ? あんまし関係ないと思うなあ〜〜

 俺たちがいろ〜〜んな毛皮の色、してるのとたいして変わんないよ 」

 

毛皮の色と? ・・・まあ確かに同じ毛皮のわんこさんを探す方が

大変かもしれないですけど・・・

 

「 だろ? 俺たちが大切にしているのは 中身。

 ココロ・・・・ってか 皆の一番奥の真ん中にあるモノ さ。 

 中身が大事! わかってるだろ〜〜 」

 

それは もう・・・

 

「 アイツ、ジョーってさ。 なんつ〜かいつもすごく淋しい顔してて。

 なんとなくいつもにこにこ・・・・してるみたいだけど

 ココロからなんか笑ってなかったんだ 」

「 俺とさ〜 遊んでいる時とかだけ だったな。 

 アイツがココロから楽しそう〜に笑ってたのって。

 ― アイツと俺は あんな風な別れをしたけど それがアイツのためなんだ 

 

ずっと一緒に過ごすってことはできなかったんですか?

 

「 無理だね〜 アイツはさ 自分自身の手で <終わり> を決めて

 吹っ切れたのさ。  」

 

でも〜〜 あんまりだなあ〜〜って思ってたんですけど・・・

あのラストは ・・・

 

「 わわん! あ ごめん。 俺とアイツが いいな って思ってんだ。

 それが一番さ。 

 ふふふ〜〜 いっこ教えてようか?

 アイツのさ、ココロの奥、一番大切なトコに俺がいるんだ 今でもね〜〜 

 だから アイツ、生きてゆけるんだ。 」

 

親友はいない、って言ってたんですよ〜 ジョーさんは。

 

「 アイツはそういうヤツなんだ。 そういうニンゲンなんだよ 

 俺は一生、アイツのココロの中で生きてる。 それでいいのさ。 」

 

 そう ・・・ なんですか ・・・

クビクロさん、 アナタも幸せですねえ

 

「 うわん♪ 俺 さっいこ〜〜にシアワセな人生だったなあ〜〜

 地上でも 今でも これからも さ〜〜

 わん? しんゆう?  一緒にいるだけが 親友 じゃあないんだぜ〜〜 」

 

 じゃあなあ〜〜〜  わんっ!

茶色毛のわんこ氏は 誇らし気〜〜に尻尾をきゅっと巻き上げ

駆けて行きましたよ。

 

  ・・・ そっか〜  ・・・ そういう人もいるんだなあ ・・・

 

 

 

  

               **************************

 

 

 

 

  カタン。 ―  アパルトマンのドアを開けて 褐色の髪の女性が入ってきた。

 

「 あ〜ああ〜〜  つっかれたぁ〜〜〜 

 ま ともかく試験 おわり〜〜〜っとぉ〜〜   」

ドサ。 彼女は居間のソファにバッグを放りだした。

「 結果は ― ま 進級はできるだろ。  おと〜さん おか〜さん〜〜

 アタシは がんばりましたあ〜〜  」

 

     ふう〜〜〜〜    

 

古びているけど、結構いい雰囲気な天井にため息、というか 深呼吸 みたいな

息が 吹き上がってゆく。

 

     はあ ・・・ ここに暮らして もう・・二年かなあ〜

 

「 あ・・・そうそう 手紙 手紙〜〜〜  来てたんだよね〜〜

 ふふふ〜〜ん  おか〜さん、 ホント マメだよねえ 

 この時代に 週一ペースで紙のエア・メイルってさ〜〜  

 アナタくらいなもんですよん  ふらんそわ〜ずお母さん〜  」

ぶつぶつ言いつつも 彼女は嬉しそうだ。

  ふんふんふ〜〜ん ・・・ ハナウタ混じりに パチン。  

バッグの中から薄い封筒を取りだした。

「 はいはい 今週の < ご注意 > はなんですかあ〜〜〜 って 」

ソファに座り込むと ぱりぱりと封筒を開けた。

「 え〜〜と ・・・

 すぴかさん 元気でいますか。 ちゃんとご飯 食べてますか。

 今週で試験 終りね。 休暇はどうするの? 帰っていらっしゃい。

  〜〜〜〜    はあ ・・・ もう決まり文句だね、 これは 

 だいたいねえ〜〜 ふらんす人の母親が ふらんすにいる 半分ふらんす人の

 ムスメに な〜〜んだって 日本語で手紙かいてくんのって〜〜 

茶色の艶やかな髪を くしゃくしゃ〜〜と掻きまわす。

チビの頃からの金髪、母譲りの金髪は 思春期に入るとだんだんと濃くなってきて

18歳の今は どちらかといえば父親の髪の色になっている。 

 「 お友達はできた? 休暇には親友さんと旅行・・・ なんてのもいいわね。

 ですか〜〜  は・・・ そうかなあ?

 オトモダチ  は いるけど ・・・ う〜〜ん??  

 ― 考えるとさあ アタシって 親友っていないかもな〜  」

 

 パサ。  手紙を置くと 彼女はソファにひっくり返る

 

「 日本でも こっちでも・・・ 仲良し や 友達 は けっこうたくさんいるんだ。

でも・・・ 所謂 親友 って いないな・・・

 ヘン? 別にいいかな〜〜ってアタシ、思うよ。 ねえ わんこ〜〜 」

 

すぴかはソファの背もたれに手をのばす。

ソファは壁に押し付けてあるので いろいろなモノが置いてあるのだけれど

その真ん中に 薄汚れたわんこのぬいぐるみ が鎮座している。

どうみても 手作り だ。

 ぽん、とそのコを手につかんで抱っこする。

 

「 アタシのず〜〜っとの 親友 は あんたかなあ  わんこ? 」

これは 中二の夏休みに  もらった。   わたなべだいち君に!

「 えへ〜〜 なんかさ〜〜〜 めっちゃ嬉しかったんだ〜〜

 なんで? なんて突っ張ってみせたけど・・・ あれからず〜〜〜っと

 一緒だもんね〜〜 

縫い包みに語りかけつつ 母の手紙をちらり、と読み直す。

「 親友  かあ ・・・ いないと ヘンかなあ ・・・

 ね〜〜 わんこ〜〜  きいて? 」

彼女は 縫い包みを目の前に抱き上げる。 茶色の瞳が笑っている。

 

「 わんこ。 アタシはさ〜 なんかこう・・・ すぴか なんだよ。

 すぴかってさ 知ってる?  星の名前なんだ。

 お父さんが選んでくれた名前。 アタシ 大好き!

 めっちゃ気に入ってるし自慢なの。 

 

薄汚れた縫い包み君は 熱心に耳を傾けてくれる。

 

「 すぴか あれが スピカ だよって。

 チビの頃、おじいちゃまが教えてくれたんだ。 キレイな星でさ。

 あ  アタシ なんだ〜〜 って。 チビだったけどすごく納得した。

 アタシは 夜空にぴっかり輝いている・すぴか。  それでいい・・って

 なんかず〜〜〜っと思ってる。 」

 

もしゃもしゃもしゃ〜〜  わんこ君を撫で撫でしてみる。

 

「 すばる? あ〜れは弟ってか 一番長く一緒にいたアタシの半分だからさ〜 

 まあね 一番近いトモダチかもしんないけど・・・

 おじいちゃま はいつもず〜〜っとアタシの味方 してくれた。

 アタシのこと、いっちばんわかってくれてたかも …って思うな。

 すぴかや どうした? って いっつもアタシのこと、気にしてくれたんだ〜 

 アタシ、おじいちゃま 大好き。 亡くなってしまったけど・・・

 今でもアタシのこと、見守っててくれるって 感じるもん。 ねえ わんこ? 」

 

   ・・・・?  わんこ君 は首を傾げて彼女の話を聞いてくれている。

 

「 え お父さん? ・・・ 優しいよ、優しすぎる かな〜〜

 なんであんなに優しいんだろうな〜  

 きっとさ、 お父さんはホントはすご〜く強いんだと思うんだ、

 だから あんなに優しいヒトでいられるんだよ きっと・・・

 お母さんは  ― 永遠のライバル〜なんて思ったこともあるけど 

 ・・・も〜ね かないっこないも〜〜ん って気分。

 アタシはあたし お母さんはお母さん さ。

 あのヒト いつまで〜〜〜も < オンナノコ > なんだよね〜〜 」

 

あははは ・・・ すぴかはわんこ君を抱きあげた。

 

「 君を作ってくれたヒト ― 彼もいいヒトだよねえ〜〜〜

 ウチの愚弟、彼を < しんゆう > にしたことが生涯で最高のコトだと思う!

 え? 彼のこと? ・・・ そうだなあ〜〜 好きだよ。 今でも。

 でも あんなにいいヒト ・・・ アタシには勿体ないよ  たぶん 。 」

 

すぴかは 縫い包み君をきゅう〜っと抱きしめた。

 

   ・・・ すぴかさん。 本当は 大好き なんでしょう? 

   彼 ― わたなべ だいち君 のことを さ♪

 

 

 

    § ともだち

 

 

 

「 すぴか かい? あ〜 あのコは ― 面白い娘じゃのう〜〜

 ちょっと変わっておって それがあのコの魅力なんだが 」

博士は 少し遠い目をしたが穏やかに微笑んでいる。

「 見かけは母親似だがなあ  中身は ・・・ アレは ジョー だな。

 いや フランソワーズにも似てるところもあるか・・・

 すぴか という名にふさわしい娘じゃよ 」

ちょいと風変りな < 孫娘 > を 彼はお気に入りのようだ。

「 まだ小学生じゃがな〜 感受性の鋭いコじゃよ。

 いや 年がら年中 外で跳ねまわっておるコじゃが いろいろよ〜〜く

 見ておるよ。  裏山は すぴかの < 領地 > じゃから。

 どこにどんな木があり 花が咲くか よ〜〜く知っているよ 」

双子は 博士に宿題の相手なんぞもしてもらっているのだが ・・・ 

「 宿題? いやあ 別に教えてなんぞいないさ。

 そうさなあ〜〜 < 考え方 > を 手ほどきしている、くらいかな。

 二人とも それだけで算数は大好き なんだと。

 新しい問題には わくわくするそうじゃよ。

 すぴかはとてもいい文章を書くし、 すばるはなんでもじっくり腰をすえて

 取り組める子じゃよ  ―  二人ともほんに楽しみじゃ ・・・  

 

  ふう〜〜  博士は穏やかに笑う。

 

「 幸せに生きてほしい。 それがワシの最後の望み だ ・・・・

 この家屋敷は ジョーとフランソワーズの子供たちに遺す。

 後の資産は 9人の < 息子たちと娘 > に 平等に分ける。

  ・・・  つよく 生きてほしい ・・・ いや 生きられるコ達じゃよ 」

 

血縁ではないが それ以上にしっかりと結びついた存在に 博士は惜しみない愛情を

注いでいる。

 

   

 

 

「 え?  しまむら すぴか さんのことですか?

 あ 〜〜〜  幼馴染です。 あとぉ 僕の親友の姉さん。 」

くりくり癖っ毛の青年は 穏やかに笑う。

「 僕? 今はまだ学生ですよ、 はい 一ツ橋です。 経営の勉強してるんだ。

 う〜〜ん 会計事務所とかで仕事してゆきたいです。

 え ・・・ ホントの目標はなにかって ?   ― なんでわかるの?

 あの さ ウチは親父が珈琲店 やってて。 まずまず繁盛してるんだけど

 しっかり経営を軌道に乗せたいんだ。 お袋も店、手伝ってるし。

 そしたら ―  ホントにやりたいこと やる!

 それは ・・・ 秘密さ。  そして ―  彼女に申し込むんだ。

 え〜〜 なにを・・・って?   えへへ ・・・ 結婚してください ってさ。

 うっそ〜〜〜〜って 笑われちゃうかもな〜〜

 

  でも 僕。  ず〜〜〜っとずっと 好き なんだ。

 

  チビの頃から ・・・ もしかして初めて会ったときから。

 

 いつだって風に向かって きりっと立ってる彼女が さ。

 彼女にはさ、 思うままに生きていってほしい。 

 そのために 僕が、この僕がさ がっちり支える。 支えたいんだ!

 ・・・ そんな オトコになりたいな〜〜〜 って 思ってマス。

 

 え? ・・・ まだナイショだよぅ〜〜〜

 彼女 ずっとフランスにいるんだけど ― < わんこ > がさ

 あはは〜〜  僕が中坊の時に作った縫い包みなんだけど〜〜

 アイツが 側にいてくれるんだ。

 おい わんこ〜〜〜 僕の代わりに 彼女 護れよ〜〜〜  」

 

優しい笑顔の青年は なんだかとてもとて〜〜も頼もしい顔になっていた。

 

 

  すぴかさん?  貴女を大事に想うヒトは ちゃ〜んといるよ〜〜

  ― あ いっけない〜〜  

  貴女について語るもう一人、重要人物がいました☆

 

 

「 え〜〜 なに??  姉貴のこと? あ〜 僕たち双子なんだ。

 ・・・ 今でもさ〜〜 僕 なんとなくおっかないんだよねえ〜〜

 幼児体験が疼くってか〜〜  トラウマ ってヤツ。 」

その青年は短く刈り上げた金髪を わしゃわしゃ〜〜〜 掻きまわす。

「 今? あは・・・ 医大生っす。 いっそがしいんだよ〜〜う

 も〜〜 授業 詰め詰め〜〜だしさ〜〜  遊ぶ? んなヒマ ないよ〜

 姉貴だって忙しいんでないのぉ〜 全然帰ってこないしさ 」

高校卒業したときには 両親とパリに行きましたよね〜〜  どうでした?

「 ・・・ よく知ってるね。   うん なんか・・・ 衝撃的だった。

 お袋のルーツを こう・・・肌で感じたってとこかなあ。

 姉貴もさ なんか大人になってた。 ふつ〜の顔してビールとか飲んでたし・・・ 」

お姉さんと仲良し?

「 ってか 俺 ず〜〜〜っとすぴかに支配されてっから。

 生まれる前からだからね〜〜 別にそれがふつ〜〜って気分。

 すぴかが留学してからも 感じてるもん。  ヘン? 

 別にいいじゃん、俺が いいって思ってるんだもん。 

 それが すぴかと俺の関係なんだろうね〜 」

親友 ですか?

「 親友 ってか ・・・ 俺の半分 かな。 多分、死ぬまで。 

 だから ― すぴかには 幸せになって欲しい。 ぜったい さ。

 いつか 俺ら < ふたりだけ > になるだろ ・・・?

 すぴか。 俺が すぴかの応援団さ 

 な〜〜〜 すぴか〜〜〜。 だいちの気持ち、気付いてやれよ〜〜 」

 

 

        すぴかさん。  ここにも しんゆう は いるよ 

 

 

                 親友 は  いるんだよ

 

 

 

*****************************       Fin.     **************************

Last updated : 02,12,2019.                     back      /     index

 

******************   ひと言  ***************

それぞれの人物像? を それぞれのトモダチに

聞いてみました♪  

ジョー君は やっぱり孤独なニンゲンなんでしょうね・・・